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生きる力を学べる時間

更新日:2月9日

 教育実習中の美大生から「現在の中学・高校での美術授業は、先生の目にはどのように映っていますか?」といった質問を受けて、「違和感を覚えています。」と答えました。

 これまでの美術教育を批判的にみているというよりは、現在のような美術カリキュラムや評価基準だと学校教育として「美術」の教科の必要性を感じてもらえなくなり、学校教育から美術授業がなくなってしまうといった危惧をしています。


       『ひまわり』1888年8月 フィンセント・ファン・ゴッホ


 現在の美術授業では、つまるところ“個性や感性を伸ばす”といった漠然とした目的しか聞こえてきませんし、具体的な達成イメージがみえません。特に義務教育では「美術」授業も、他の教科と同様に生きていくために必要な教育として捉えることが自然であると考えています。

 「保健・体育」の授業は、自分の体のことを知り、理解して健康を維持していくために体力をつけていくことが目的で、アスリートを育てるものではありません。「国語」の授業も日常生活や仕事をする上で必要な読み書き、文章、作文力といったものを身につけていくことが目的で、決して受験対策や小説家を育てるための才能発掘の場ではありません。  「美術」の授業も日常生活や仕事で使っていく図式や絵を描けるようになったり、ビジュアル情報を読み解く力を身につけたりしていくことが大切なことだと考えています。


     『クリスティーナの世界』1948年  アンドリュー・ワイエス 

 美術作品の鑑賞や表現力、感性を磨くことは美術教育の目的の中の一部分で、まずはビジュアルでのコミュニケーション力の基礎として、文字の読み書きと同様に絵を描いたり色を使いこなしたりすることを具体的に学ぶ必要があります。

 この基礎力を土台として、視覚情報として見たことや頭の中で考えたことを可視化し伝達する力、物事の本質を観察していく力、答えのない問題を解決していく力を培っていくことは、社会で必要とされる重要な教育なのです。


『通りの神秘と憂愁』1914年 ジョルジョ・デ・キリコ


 デッサンを描くために必要な観察眼とは、表面的な描写力だけではなく、対象となるものごとの構造やその周りからの影響を読み解き、理解する力だといえます。このリサーチ力、思考力、伝達力は絵を描くことにとどまらず、様々な仕事にも必要とされています。

 これから先、あらゆる場面で問われる、答えのみえない問題の解決策を創造する力を身につける教育が求められています。そういった視点からも美術カリキュラムを考えていかないと、社会での美術教育の効果が単なる【感性教育】だと誤解され、【生きていくために必要となる感覚(五感)を磨く教育】に成りえる”創造性を養う教科”であることが理解されないまま必要とされなくなり、「美術授業」が学校教育からなくなってしまう可能性があります。

『聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ』1499年 - 1500年ころ レオナルド・ダ・ヴィンチ




実社会で機能する美術教育


 SDGsを目指し始めた世界で、欧米ではデザイン思考やアート思考による美術教育の社会的役割が重要視されている昨今、日本でも文化庁や文部科学省の教育改革だけではなく、企業や行政も働き方改革、社会人の学び直し、社員教育、職員研修も“新しい教育”といった「正解のない問題」に取り組んでいます。日本の文化が国内外で見直されている中で、その特有の視点を活かした美術教育が世界から求められていると実感しています。

 

 「正解のない問題」への対策で迷走している学校教育の現場や行政、企業での社会活動を通じて、日本の持続的な経済成長社会であるSociety5.0の実現へ強い意志を持ちながらもアナログへの回帰、伝統文化の伝承の重要性が高まってきていることも肌で感じています。STEAM教育、学校教育の現場、伝統文化の工房、企業、行政の職員研修など実社会の様々な分野の方たちと協働しながら、私自身も試行錯誤を続け教育プログラムの研究・開発と実証を繰り返してきた成果として“実社会で機能する美術教育”が整理されてきています。


 美術教育によって磨かれる“感覚や創造性”は、子供から大人まで想定外な環境に順応して生き抜いていく力を身につけていくために生涯、継続して必要なものなのです。そんな現代に合致した美術教育を開拓するためには、実社会を直視して今の問題を的確にとらえ、多様性のある美術プログラムを開発し、多角的な視点で実証してきた美術教育の研究者とそのプログラムを実践できる指導者が必要だと実感しています。




学びの姿勢を見直す


 より良い社会・文化を次世代に継承し、成長が持続する未来を創造する力を育てるために美術教育を追求し続けることが社会貢献であると考えています。

アインシュタインが「直観は聖なる授かりものであり、理性は誠実なる従者である。私たちは従者を敬う社会をつくり、授かりものを忘れてしまった。」と嘆いていました。日本においても人の脳に備わる最も大切な能力(知覚・直感・想像力・創造力)を近代の社会や教育で、ないがしろにしてきたことが現代に影響しています。また、「やっかいなのは、何も知らないということではない。実際は知らないのに知っていると思い込んでいることだ。」とマーク・トウェインが提唱しています。

すべての教育において創造性が大切だということです。自分でみつけること、理解できることへの喜び、創造することの楽しさに気づいて成長できることこそが“学び”なのです。すでに民間の教育機関が実社会に合致した研究を進めていますが営利目的に変わりがないので、研究機関である大学が高い志と社会性をもった美術教育を先導していける研究を実現できると信じています。



美術教育が、人や社会を育てる


 「よく観ること。しっかりと感じとること。多角的な視点をもつこと。伝え方を工夫すること。本質を探ること。違和感を見つけ解消していくこと。知らないことに気づいていくこと。創造すること。」

これら生きるために大切な感覚機能と創造性を美術教育で磨けるのです。このような感覚を磨くことが日常生活や一般的な仕事で見直されてきています。芸術的な素養としての美意識を磨いている人は、サイエンスの領域でも高い知的パフォーマンスを上げています。これらを理解して教育できる“美術指導”が必要とされ、すべての分野でアートが求められています。


みんなクリエイターになれる


創作は、本質に向かうから面白い。本質に触れると楽しい。芸術、芸能、スポーツなど特殊な分野、職種だけではなく日常的な生活、仕事そのものに創造性が求められてきている。 創造性を意識すると毎日の作業が創作に変わり、やりがいや生きがいを感じられる。


本質を見抜くための必要最低限の基本技能(絵画技法だけではなく)は、エッジ・スペース・相互関係・光と影・形態(ゲシュタルト)の5つ。だから絵を描くことは世の中の物事を読み解く能力を磨くことに繋がっていく。

2次元ではなく3次元で考える。 経営の神様である松下幸之助が 「経営とは、白紙の上に平面的に価値を創造するだけではない。立体というか四方八方に広がる芸術である。となれば、経営者はまさに総合芸術家。」と言っている。


レオナルド・ダ・ヴィンチは、凡庸な人間は「注意散漫に眺め、聞くとはなしに聞き、感じることもなく触れ、味わうことなく食べ、体を意識せずに動き、香りに気づくことなく呼吸し、考えずに歩いている」と嘆いていた。

また、ダ・ヴィンチは、あらゆる楽しみの根底には「感覚的知性」を磨くといった真面目な目的があると提唱していた。

本を読んだり、庭いじりをしたり、絵画を学ぶことやイラストやマンガを描くことも、そういった感性を磨く「楽しさ」のひとつ。




美術教育にできることの”つぶやき(ツイート)


知識量やスキルなんて他より劣っていてもいい。今の自分を十分に見直して、新鮮な視点で使いこなしていけば他にはマネができない独創的なものに成長する。


絵や音楽、言葉を使う最大の目的は、人の心に開放感をあたえること。思い込みに縛られないように新鮮な情報を伝え続ける。お互いを理解して、自分らしく生きるためには

絵や音楽、言葉の文化交流が必要。


誰かを想う気持ちで、自分も癒されていく。脳科学の分野でも相手への感謝の言葉や褒めることが、自分自身がそう言われているように脳が認識していくことが

やっと分かってきたようです。


“幸せを感じるのは成長が加速する時、止まれば消える”

  絵を描くことも仕上がった達成感というよりは

「もっと良くしたい、もっと描きたい」といった過程で成長が加速し続ける。だから画家は年をとってもボケないで長生きする人が多い。

「デッサン力があるということは、絵の上手い下手の違いではなく情報を収集する力や伝達する能力、ものごとの構造を見極められることや構想している計画や企画を具体的に展開していく能力。頭の中のイメージ(ビジョン)を絵に描き出す感覚を磨くことが、日常生活や一般的な仕事で見直されてきている。」 「本質を見抜くための必要最低限の基本技能(絵画技法だけではなく)は、エッジ・スペース・相互関係・光と影・形態(ゲシュタルト)の5つ。だから絵を描くことは世の中の物事を読み解く能力を磨くことに繋がっていく。」 「アートに触れることで日常を非日常に変えるのではなく あまりにも日常的で普通のこととして見過ごしていることに視点を向けたり、気づいたりすることで考え方や意識が変わる。 アートに触れることで五感が機能して、結果的に今までの日常が変わる。」


 web・SNSは教育現場にも深く関わり、日頃の研究の成果・効用を検証し捉えダイレクトに反響を得られる効果的なメディアとなっています。私自身SNSを”共感”のバロメーターとして利用しています。美術教育の研究も含めて”つぶやき“を8年間、続けてきた【文田聖二 FUMITA SEIJI@fumitaseiji/ Twitter 】は現在、フォロワー4.8万人です。

美術教育にしかできないことや可能性をできるだけ沢山の方たちに理解していただくために、twitterでもつぶやき続けています。



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