美意識が生まれる条件
いつの時代も思い込みによる閉塞感が、人を不安にしていきます。新しい時代に合わない古い風習や習慣で、人の心(感じ方・考え方)がしぼんでいかないように常に新鮮な情報を発信して、次世代に開放感を与えてくれる美意識がどの時代も求められ続けてきたのです。
『最後の審判』ミケランジェロ システィーナ礼拝堂
あたりまえのことですが、地球上のものは地球に存在する物質の組合せでできています。炭とダイヤモンドの違いは、その物質ができる条件による違いです。
歴史に残る芸術家や偉人、天才にしても他の凡人たちと同じ社会、似たような環境の中で、誰もが経験しえるいくつかのできごとが組み合わされて造り出されたといえます。
どんな発想も発明もそれまでとは異なる新鮮な条件がそろった時に生まれてきました。これらは偶然の出来事のように思えますが、その特殊な条件がそろう状況に成るべくして成った必然とも考えられます。また、“寄り道・まわり道”をすることで、画期的な発想や発見に至ることがあります。無関係だと考えていたモノゴトとの共通点や接点を知ることで、理解が深まって視野も広がっていきます。
そんな”気づき、理解すること“が最も高貴な喜びだと、芸術家でもあり多岐にわたる分野の研究者でもあるレオナルド・ダ・ヴィンチも話しています。
トリノ王宮図書館が所蔵するレオナルドの自画像 1513年 1515年頃
なぜ、人は美意識を生み出したのか
身近なもの、見慣れているものでも改めて見直すと新しい発見があります。誰もが知っていると思っている歴史的な出来事でも常に現代の状況で見直され、塗り替えられています。
情報は、常に更新されていくのです。
『モナ・リザ』1503 - 1505 1507年 レオナルド・ダ・ヴィンチ
じつは「知っているつもり」でいる大半のことが自分の勝手な「思い込み」なので、「真実に近づいている」といえることは、いま実際に深く関わっていることだけだと言えます。
『ダンス教室(バレエ教室)』 1873-1875 エドガー・ドガ
アートは美意識
昨今、アートが教養や教育だけではなく、創造性や美意識、アート思考などこれまでとは違った視点でビジネスマンにも注目され見直されていますが、そもそもアートって何?でしょう。アートは、美術館や美術の教科書に載っていた画家や彫刻家がつくった芸術作品?でしょうか??
『ブリュニケル洞窟ストーンサークル』
アートには、「影響」「技」「術」「創造」…さまざまな意味があり、国や時代の違いによってもその意味は変わってくるし、ちゃんと定義づけされていません。
『バベルの塔』 1563年 ピーテル・ブリューゲル
学校教育や社会人講座など、さまざまな世代に向けたアート指導の現場で「どんなアートをしたいですか?」という問いに対して、「写真、絵画、映画、彫刻…がしたい。」といったモチベーションではなく限定された制作手段を答えてしまう人がほとんどです。
「どんなことがしたいですか?」と質問をかえると「旅、開発、物語つくり、ゲーム、冒険、新発見、人助け、研究、語り部、教育…」と答えます。
そんな時代を象徴する人々のさまざまな欲求・願望、ワクワクさせてくれるモノゴトこそ、その時代のアートといえるのです。
『ひまわり』1888年8月、アルル フィンセント・ファン・ゴッホ
『モルトフォンテーヌの思い出』1864年 カミーユ・コロー
『ゲルニカ』1937年 パブロ・ピカソ
Dalton Ghetti作品
アートのとらえ方によって”芸術のはじまり“を古代エジプトのピラミッドにファラオと一緒に埋葬された副葬品と考える人もいますし、美を定義づけた古代ギリシャ彫刻、あるいは4万年前の石器時代に描かれた最古の壁画だと考える人もいるのです。そうなると人類初の芸術家は石器人に生まれたとも考えられるのです。
『シャプティ像』
人類最古のショーヴェ壁画(3万5千年前)
『ライオンマン』 4万年前
アートの「原因と結果」
19世紀フランスパリでは、若き芸術家たちがモンマルトルの丘のバトー・ラヴォワール(洗濯船)を憧れ愛し、引き寄せられるように集まり、お互いをリスペクトし切磋琢磨していました。
そんな街の小さな一角から世界を大きく変える芸術作品(新しい価値観)が次々と生み出されていきました。
左からモディリアーニ、ピカソ、アンドレ・サルモン(1916年8月12日パリ)
産業革命が起こったイギリスでもそれまでの芸術を引き継ぐ保守的な新古典主義とその頃、時代を台頭した革新的なロマン主義の芸術家たちが、それぞれの信じる表現を主張し対立しながらも創造性を高めていき、サイエンス、アート、思想、世界の経済までも大きく揺るがす爆発的なパワーを発信していたのです。
『グランド・オダリスク』 1814年 ドミニク・アングル
『民衆を導く自由の女神』 1830年 ウジェーヌ・ドラクロワ
14世紀のイタリアのルネサンス期では学術的な縛りがなく、お互いの考え方や気づきと技術をぶつけ合いながら研究を繰り返し、数千年前の古代ギリシャ人は自由を愛し身体と精神を調和させ、古代エジプト人は、誰も観たことのない死の世界を書に綴り想像力を覚醒させていきました。
『最後の審判』 ミケランジェロ・ブオナローティ システィーナ礼拝堂
『古代ギリシャ彫刻』
『死者の書』古代エジプト
[art]は、ヨーロッパやアメリカで育った概念
•「art」を翻訳するために日本が生み出した言葉「芸術」
•「art」=「リベラル・アーツ」の意味
•リベラル・アーツとは「すべての人に必要とされた学問」 ≒ 哲学 「人が持つ必要がある技芸(実践的な知識・学問)の基本」
•リベラル・アーツの7つの科目[ギリシャ・ローマ時代に理念的な源流を持つ] 文法学:言葉を正しく使う方法を学ぶ 修辞学:他人を論破する方法(弁論術、雄弁術、説得術)を学ぶ 論理学:思考のつながりを明確にする方法を学ぶ 算術 :計算方法を学ぶ 幾何 :図形や空間の性質について学ぶ 天文学:宇宙の性質や法則を学ぶ 音楽 :音の性質や理論を学ぶ
『ギリシア哲学者アリストテレスと若きアレキサンドロス大王』
アートヒストリー
古代美術(~4世紀)
古代エジプト壁画
キリスト教美術(5世紀~)
「伝統的な主題:キリスト教・神話/教え、道徳、理想」
ロマネスク サン・クリメン教会
ミラノのドゥオーモ大聖堂
イタリア、ミラノのドゥオーモ大聖堂でカラフルなステンド-グラスの窓
『聖マタイの召命』1600年 カラヴァッジオ
近代美術:革命の時代・産業革命(19世紀)
「伝統の解体:ロマン主義が台頭した時代」
『サルダナパールの死』 1827年 ウジェーヌ・ドラクロワ
『種まく人』1850年 ジャン=フランソワ・ミレー
印象派:新しい基準(19世紀~)
「画家の実際の視覚体験を見る人に伝えること」
『サン・ラザール駅』1877年 クロード・モネ
『ムーランド・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』1876年
ピエール=オーギュスト・ルノワール
モダンアート(19世紀後半~)
「否定:伝統とのつながりを断つ]
『ヴァイオリンと葡萄』 1912年 パブロ・ピカソ
コンテンポラリーアート(20世紀~)
「アートの価値観の再構築」
彼女の独身者に裸にされた花嫁、さえも」、通称「大ガラス」1915-1923年
『緑色の惨事10回』1963年 アンディ・ウォーホル
『Portrait of an Artist (Pool with Two Figures) 』 1972年 デイヴィッド・ホックニー
素晴らしいブログ ありがとうございます
早くどっぷりお邪魔したいです