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アートと社会
更新日:2022年2月16日
アートとビジネス
「アートとビジネス」は無関係で別物だと思い込んでいる人が多いと思われます。まずは「アートとは?」といった何だか得体のしれないものからではなく、「仕事とは?」といったことから見直してみましょう。
20世紀ドイツ出身の哲学者であり思想家のハンナ・アーレントは、人が働くことを分かりやすく分析しています。
・労働 :食べていくためにやること/我慢(つらい)/トラバーユ(労苦、骨折り、罰)
・仕事 :クリエイティブな自己表現/充実(楽しい)/やりたいこと、探求したいこと
・活動 :公共のためにやること / 満足(嬉しい)/ 奉仕

思想家 ハンナ・アーレント
彼女が生きた時代、ドイツではナチズムが台頭していたので迫害を逃れてアメリカ合衆国に亡命した背景があります。同時代の女性といったら「アンネの日記」の著者アンネ・フランクを思い出しますが、ハンナも人が人らしく生きることに対して純粋な思いがあったのだと思います。また、彼女は20世紀最大の哲学者といわれるマルティン・ハイデッガーの元恋人であり、若いときから現実社会を真摯に見つめ合いながらのハイレベルな知的交流があったと思われ、その深い考え方や言葉一つ一つに説得力を感じます。
芸術を愛するフランス人の働くこと、トラバーユ【travail:仏】は【痛み、労苦、苦悩】を意味します。
フランス人の社会人類学者クロード・レヴィ=ストロースは日本人の仕事に対する考え方、特に地方の民芸、職人の創造性のある仕事に興味を持ち 日本の仕事をtravailと訳せないと言ったそうです。
日本人を見直す言葉
坂東玉三郎氏の芸の目的は「お客様に生きていてよかったとおもっていただくこと」

働くこと
縄文時代の労働時間は1日平均4時間だった。もし縄文人がもっと実利主義だったらもっとずっと早くに水田稲作を始めて国を作って、隣国まで領土を広げていたかもしれません。 しかし、縄文人が争いも競争することも考えないで、ただただ共有しながら生き続けるために大真面目に取り組んでいたのは、実利には直接結びつかないクリエイティビティだったからこそ、大きな争い事もなく数百年といった長い時間を穏やかに暮らせていたのだろう。
狩猟採取社会と農耕牧畜・農業社会
・狩猟採集社会(親族が基盤)は、次の食事にありつくことに関心を集中させていた。
・ 単純な武器(槍、弓矢、石包丁など)を使っていたが、協力と共有を奨励し、戦争を す ることはほとんどなかった。 かれらの真の敵は、自然の力であり、多くの人は子どものときに死亡し、20 歳に達 する者は半分もいなかった。
・狩猟採取社会は、精神的指導者を認めており平等主義的だった。
・農耕は、人びとが採集をやめて「自分自身で育てる」ことができるようになるための 発明であった。
・日々の生活を支えるのに必要とされる以上の資源を生産することができるようになる と、すべての人が食糧を確保する必要はなくなった。だから職人になったり、交易に 従事したり、理髪師になったり、刺青を彫ったり、牧師として仕えたりする者など農 耕牧畜社会はずっと専門化して、複雑になった。
・家族によっては他よりも生産する食糧が多いのでかれらは相対的に権力と特権のある 地位に就いた。 ・手仕事から解放されたエリートたちは、 哲学、芸術、文学の研究に従事することが できるようになった。
・生産性は上がったが、社会的に不平等で、奴隷制度、長期にわたる戦争が起こった。
・宗教は、仕事を道徳的な義務であると定義することによって、農業エリートの権力を強化していった。
① 社会で求められる人材
・相手の視点で発想し工夫できる
・社会情勢や環境変化に対応できる
・様々な環境から物事を捉えられる
・積極性がある
② 社会に役立つアート(レッスン)のノウハウ
Ⅰ:見つける力 =察知・予測・リサーチ力
・問題を的確に発見する情報収集
Ⅱ:考える力 = 視点、考え方の発見・発想
・テーマ(目的)に添った情報整理(応用力・工夫する力)
Ⅲ:伝える力 = 創造力・伝達力
・情報のビジュアル(具現)化
③ 社会で求められている能力
Ⅰ:察知・予測・リサーチ(観察)力
・必要な情報を的確にとらえる。
・物事は多角的に観ないと観えていることにならない。事実が伝わらない。
Ⅱ:情報整理(思考)力
・問題を解決のために工夫する力
・共感を受ける考え方(新しい価値)を導き出す力
Ⅲ:伝達力
・考えていること、伝えたいこと、対象物を視覚(ビジュアル)化することで、情報を
具体的に共有できる。
④ 社会的な効用
医療は、患者に問診し、専門知識と医療技術で治療をする。
芸術は、問題点を発見し、新しい価値観と創造性で問題を解決する。