top of page
検索

アートの民主化 Chapter 2                             自分らしさに気づくために




モチベーション(活力:目標。何をしたいのか。)

「何のために、誰のために企画・行動したいのか」



 この問いは、私たちが日々の生活や創作において直面する根本的な課題です。自分の知っている「自分」は、大半が思い込みや過去の経験に基づいたものであり、私たちはその固定観念に囚われがちです。


『自画像』1887年春 フィンセント・ファン・ゴッホ


 視点を少しでも変えることで、私たちは新たな可能性に気づき、自信を持って前に進む力を得ることができます。


『民衆を導く自由の女神』 1830年 ウジェーヌ・ドラクロワ


 ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』(1830年)は、革命の象徴として知られていますが、その背景には人々が抱くモチベーション――自由への渇望、正義への願い――が描かれています。この作品は、歴史の中で何度も再解釈され、異なる時代や社会的状況においても新たな意味を持ち続けています。それは、私たちが何のために、誰のために行動するのかという問いを常に投げかけているからです。



モチーフと衝動


 創作の動機は、純粋な欲求や衝動から生まれることが多いです。子どもたちが遊びに夢中になるように、大人もまた、自分の中にある衝動に突き動かされることで、新しいものを生み出す力を持っています。


『鳥獣戯画絵巻』


 『鳥獣戯画絵巻』に描かれた動物たちの生き生きとした姿は、自由奔放でありながらも、どこか人間的な感情や動作を彷彿とさせ、私たちが本来持っている無邪気な創造力を思い出させてくれます。



幸せと創造性


 幸せを感じる瞬間、それはしばしば創造性と深く結びついています。ルノワールが描いた『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』(1876年)のように、人々が楽しみ、喜びを分かち合う姿は、私たちが「幸せとは何か」を考える上で重要な手がかりとなります。ルノワールの作品には、楽しさと喜びが溢れており、それが観る者に伝わるからこそ、その作品が時代を超えて愛され続けているのです。


『ムーランド・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』1876年

ピエール=オーギュスト・ルノワール


『シャルパンティエ夫人とその子どもたち(フランス語版)』1878年

ピエール=オーギュスト・ルノワール


 創作活動は、自分の内面と向き合う時間でもあります。モネが描いた『パラソルを差す女』(1886年)のシリーズは、自然と共に過ごすひとときを切り取ったものであり、その背後にはモネ自身の内なる平和や安らぎが感じられます


『散歩、日傘をさす女性』 1875年 クロード・モネ


『日傘の女(右向き)』1886年 クロード・モネ


『日傘の女(左向き)』1886年 クロード・モネ


 このような作品を通じて、私たちは創造性がただの技術や才能の問題ではなく、自分の感覚や感情に素直になることから生まれるものであることを理解できます。



継続と成長


 「継続は力なり」という言葉は、創作活動においても真理です。何かを続けることで、私たちは自分の可能性を広げ、成長していくことができます。


『東洲斎写楽』


 日本の伝統的な芸術文化にも、その考え方が根付いています。例えば、『寛政三美人』(1793年)のような浮世絵は、庶民の日常を描き続けることで、当時の日本人の美意識や生活の様子を後世に伝えています。


『寛政三美人』喜多川歌麿



 私たちが何かを作り出すとき、それは自己表現の手段であると同時に、自分自身を発見する旅でもあります。ピカソが『ゲルニカ』(1937年)で描いたように、創作は時に苦しみや悲しみを超えて、深いメッセージを伝える力を持っています。


『ゲルニカ』1937年 パブロ・ピカソ


 自分を突き動かすものが何かを知ること、それを継続して表現し続けることが、やがて私たちを自分らしい生き方へと導いてくれるのです。



 このようにして、自分の中に眠っている「欲求・衝動」を見つけ、それを育てていくことが、私たちの人生を豊かにし、アートの民主化――すなわち、誰もが自分の感覚を大切にし、表現することができる社会――を実現するための一歩となるのです。




≪アートの民主化 Chapter 3 見たいものしか見えていない≫ に続く


閲覧数:4回0件のコメント

Comments


bottom of page