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アート思考:④イメージ(制作意図:何を望むのか)
更新日:2022年2月28日
「意図するイメージ・浮かぶイメージ・沸き上がるイメージ」
「イメージ」という言葉は便利で色んなとらえ方で活用されています。「男のイメージ、女のイメージをもって…」「イメージをもって試合にのぞむ」「この土地のもつイメージとは」「イメージしなきゃ」、その言葉の意味をその用途にあわせていつも理解し適確にとらえられているのかあやしいものです。イメージすることには、必要な時に意図的に想像力を使って自分自身の中から引き出していくことと、対象物(場所、相手、物など)に関わった時に自然に浮かんでくる感触、感覚と、また全く無意識にいつ何時関係なく勝手に沸き上がってくる場合などがあります。

『イメージの裏切り』 1929年 ルネ・マグリット
まず、意図的にするイメージの一例をあげます。スキーを習った時、滑る前日に上級スキーヤーの滑っている様子を紹介したビデオを鑑賞することや、経験者の話を聞くなどするイメージトレーニングをすすめられました。たとえ初めて体験することでもその要領をつかめば、その行為に似ている過去のなんらかの経験を応用していけます。要は過去の経験で無意識に培ってきた潜在能力を引き出すということです。確かに上達がはやくなったということもあります。それは意図して自分の行動を具体的に洞察し、必要な意識を発見できることでやるべきことが明快にみえてきた効果の現れだと思われます。

『モルトフォンテーヌの思い出』1864年 カミーユ・コロー
浮かぶイメージの一例をあげます。デジャブに似た感覚を覚えたことがありますか?初めて訪れたはずなのにその土地の薫りに郷愁を覚えたり、初めてあった人に親しみを感じたりする、それが浮かび上がる潜在意識です。日頃少しずつ蓄積された潜在意識が夢で繋がり、具現化された映像として浮かび出てくることもあります。それもまたイメージが起こす現象です。

『通りの神秘と憂愁』1914年 ジョルジョ・デ・キリコ
次に湧き上がるイメージは感情と似ています。癒し、恐怖、不安、喜び、幸福な感情が何かと連動して突然突き上がってきます。そんなイメージがその時の自分のバロメーターになるのかもしれません。
哲学、宗教、及びあらゆる学問の関心事である「人は何処からきて何処へいくのか」という疑問と同様、表現のためのイメージを思考することも「何処からきて…」にあてはまります。

『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』
1897-1898年 ポール・ゴーギャン
いずれにせよイメージがないまま行動に移した場合、作品制作でいえば技工だけに頼ることになったり、渾沌としたアイデアを繰り返したあげく、その表現にすぐにあきてしまったりしがちです。たとえ、なんとか(いつの間にか)作品が完成したとしても次の表現制作のための展開ができずにいき詰まりを感じてしまいます。

『子宮内の胎児が描かれた手稿』 1510年頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ
豊富な’イメージ’をもつためには、豊富な’取材’が必要です。その時に求めているもの気になるものにアンテナをひろげて生活していると不思議と情報がみえてきて必要な資料が集まっていきます。その時に何を望んでいるかでイメージできることも変わってきます。





『北斎漫画』 江戸時代 葛飾北斎
よく観ることでイメージ力が高まる
月の引力の影響が海や人の血流までにおよぶことや地球の自転で水の流れが変わったり、 宇宙に存在する(可視できないものも)すべてがねじれていたりと素直に考えると存在するそれぞれが宇宙の構造を持っていると感じる。 夜空や青空だけではなく、人の意識や感情にも宇宙を感じて面白い。




レオナルド・ダ・ヴィンチ手稿より


シュタイナー黒板絵より

『バベルの塔』1563年 ピーテル・ブリューゲル

『空ひとつ』 2017年 文田聖二
科学者ガリレオ・ガリレイが低倍率の望遠鏡で、月のクレーター(凸凹)を発見できたのは 彼が水彩画を描くことで、陰影により奥行きや立体を表現していく観察眼を身につけていたから。 芸術的な素養としての美意識を磨いている人は、サイエンスの領域でも高い知的パフォーマンスを上げている。

ガリレオ・ガリレイ

ガリレオ・ガリレイの望遠鏡

月のクレーター(凸凹)

科学者ガリレオ・ガリレイのスケッチ画
思い込みで、判断を誤る。よく観ないと世界は見えてこない。 知っていると思い込んでいる物事を絵に描くといろんなことに気づきだす。 絵は思い込みや見たつもり、知っているつもりでは描けない。 物事は「見る」のではなく、多角的な視点で「観る」ことが重要で、
書物のように「読みとく」「理解」する感覚が大切。 絵を描くと知らないことに気づき、世界をよく「観る」習慣が身につく。

『ウサギ』 1502年 アルブレヒト・デューラー

『ほつれ髪の女性』 1508年頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ

『ウィトルウィウス的人体図』 1485年頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ

『群鶏図』宝暦11年(1761年)-明和2年(1765年)頃 伊藤若冲