いまでは芸術や趣味 、仕事として多くの人たちが絵を描いていますが、歴史をひもとくと、そのときどきの人々の息づかいが聞こえてきます。
遠い昔――私たち人類の祖先が狩りをして暮らしていた時代――「絵」はいまよりも大切な意味を持っていました。彼らは動物の姿や狩りの仕方、そしておまじないの印などを絵として洞窟の壁画に残しました。彼らにとって絵は、「生きるための術」そのものだったのです。
古代エジプト時代になると、絵の内容はより具体的になります。彼らは「永遠」という言葉を好み、死後の世界を描きました。亡くなった王の石室には、生前の暮らしぶりが詳しく描かれました。
王が復活したときに、自分が何者かを知るために描かれた「記録」なのです。いまでこそ芸術性が高く評価される古代エジプト画ですが、幾何学的な秩序と綿密な観察によって、当時の生活ぶりを正確に記録しているのです。
絵を描くということは、生きることと密接につながった人間の営みともいえます。
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