覚醒する力
人も自然の一部であり、その繋がりを感じることは、私たちが持つ本能的な直感を研ぎ澄ますために重要です。
郷里 鹿児島での生活では、自然の力が至るところで感じられました。強烈な日差しが肌を焼き、台風の到来が生活を脅かし、桜島の噴火が大地を揺るがし噴煙が太陽を覆いみるみる暗くなっていくとき、私たちは自然の存在を強く意識せざるを得ません。
自然の猛威を前にして私たちは無力であり、その中で生きることで、自然の力に畏敬の念を抱くようになるのです。
自然を感じながら生活している人々は、その感覚が鋭敏であり続けることが多いように思われます。それは、自然との共生が彼らにとって当たり前のものであり、自然の一部である自分たちがその中で生きることを常に意識しているからでしょう。
私たちもまた、自然から切り離された生活を送ることなく、その恩恵を日々の生活の中で感じ取ることができるはずです。東京の都会暮らしでは、遠くに見える富士山や高尾山、近所の公園でさえ、自然との繋がりを感じることができる場所です。
寄り添う自然
自然の中で生きる植物たちは、まさにその地の環境に適応しながら生き抜いてきました。強風に耐える草花や、高く伸びる木々、触れると閉じる葉、虫を引き寄せる花びらなど、その形態や機能はそれぞれの環境に応じて進化してきた結果です。
日本の「桜」やハワイの「プルメリア」が国を象徴する植物であるのも、各地の環境や季節がそれぞれに適した植物を生み出してきた証拠といえるでしょう。
プルメリア
深い森の中で繁茂する植物たちは、一見すると無秩序に見えるかもしれませんが、実はそれぞれが微妙なバランスを保ちながら共生しています。冬に咲く花、日光を求めて伸びる木々、日陰でも生き延びるコケ類――これらの植物は、それぞれの特性を活かしながら与えられた環境に適応してきました。
このようにして形成された森は、季節ごとに変わる草花が交代しながら、常に生命力に満ち溢れた美しさを私たちに見せてくれます。
脳の覚醒
「脳内革命」によってホモ・サピエンスは他の種族とは異なる道を歩み、生き残りを果たしました。『サピエンス全史』に記されているように、ホモ・サピエンスが劇的な進化を遂げたのは、単に火を扱い、道具を使うようになったからではありません。彼らが持っていた"虚構"の力――すなわち、存在しないものを信じ、共有する能力が、脳の劇的な発達を促したのです。
過酷な環境を生き抜くためには、家族単位ではなく、大きな集団で助け合う必要がありました。その集団をまとめるためには、共通の目標やルールが不可欠であり、それを支えるのが虚構による物語でした。
空想上の動物が描かれているショーヴェ洞窟の壁画
私たちの祖先は、自然の脅威から身を守るために知識と知恵を蓄積し、それを次の世代に伝えてきました。これらの物語が他の動物にはない脳の覚醒を引き起こし、私たちを今の姿へと導いたのです。
創造力とアートの力
創造力は私たちの生存に欠かせない能力です。実生活の中でこそ、その力は発揮され、日常をより豊かに、より深く感じさせてくれます。私たちがアートに触れることで、日常の中に潜む奇跡に気づくことができれば、その日常が非日常へと変わり、私たちの視座が広がり、世界の見え方が変わるのです。
例えば、クロマニョン人が描いたラスコー洞窟の壁画は、単なる狩猟の記録ではなく、命を繋ぐための祈りや信仰が込められたものであり、その創造力が彼らを氷河期から救ったのです。
ラスコー洞窟の壁画
自然に触れていると知覚(五感)が冴えてきます。知覚が磨かれるとあらゆる情報を敏感に感じ取ることができるようになります。季節の色や香りの変化に気づき、空や星が輝き出し、雨や夕暮れでさえ楽しめるようになっていきます。
私たちが自然の一部であり続ける限り、その創造力は絶えず私たちを進化させ、新たな可能性へと導いてくれることでしょう。
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