アートストーリーでイメージを膨らませると脳のストレッチになる。
アートのはじまり:古代美術
「虚構のおかげで、認知革命が起きた」
※認知的能力(学習、記憶、意思疎通の能力)
『紀元前3万年 、映像の起源ともいえる古代壁画(ショーヴェ)』
壁際のたいまつの火が揺れるとでこぼこの壁面に描かれた動物の絵が動いているような錯覚を起こさせる。映像技術のアイデアをすでに古代人は発想していた。
生きていくため獲物がとれるように願いをこめて描かれ、まじないの儀式のために壁画をやりで突いたと思われるキズもある。
ライオンマン
「マンモスの牙を材料に作られた約4万年前の彫刻像です。ライオンの頭と人間の胴体をあわせもつことから「ライオンマン」とよばれています。」<雑誌ニュートン(2019年1月号)より引用>
・4万年前にライオンマンが作られた理由:宗教・呪術・共同体のシンボル 等
「脳(思考力)が劇的に発達」
・80万年前に火を発見し、30万年前には一部の人類種が日常的に使用。7万年前から
3万年前にかけて、人類は、舟、ランプ、弓矢、針(暖かい服を縫う)を発明、芸術と
呼べる品々、宗教や交易、社会的階層化の最初。
・たんに物事を想像するだけではなく、集団でそうできるようになった。
※特にクロマニョン人(ホモ サピエンス)は、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力
できるようになり、世界を支配した。
※約30万年前には、ホモ・エレクトスやネアンデルタール人と、ホモ・サピエンスの
祖先が、日常的に火を使っていた。
いまでは芸術や趣味 、仕事として多くの人たちが絵を描いているが、歴史をひもとくと、そのときどきの人々の息づかいが聞こえてくる。
遠い昔――私たち人類の祖先が狩りをして暮らしていた時代――「絵」はいまよりも大切な意味を持っていた。彼らは動物の姿や狩りの仕方、そしておまじないの印などを絵として洞窟の壁画に残した。彼らにとって絵は、「生きるための術」そのものだった。
【古代の絵を読み解くためのエピソード】
ヨーロッパの画家が、アフリカの原始的な生活をしているある村で、家畜の絵を描いて
いたら、
「あなたが家畜を連れて行ってしまったら、私たちはどうやって暮らしていいやら」
と村人が嘆いたという。
古代エジプト時代になると、絵の内容はより具体的になってきた。彼らは「永遠」という言葉を好み、死後の世界を描いた。亡くなった王の石室には、生前の暮らしぶりが詳しく描かれた。王が復活したときに、自分が何者かを知るために描かれた「記録」である。いまでこそ芸術性が高く評価される古代エジプト画ですが、幾何学的な秩序と綿密な観察によって、当時の生活ぶりが正確に記録されている。
絵を描くということは、生きることと密接につながった人間の営みともいえる。
アートは人間の代用といった考え方。古代エジプトでは、王の死には廻りの者達が生け煮え(生きたまま埋葬)になるという残酷な慣習があった。生け贄えの慣習に代わり(副葬品)として美術品が生まれた。
シャプティ
迷信による原始的な残酷さと美しいものをつくる能力が共存していた時代といえる。 古代エジプト人は「人の目」を通したもの、また「人の意見」を通した(独創的な)表現を全く受け入れることがなかった。独創的な表現は、神への冒涜を表すこととなり死罪に値することだったから。
迷信による原始的な残酷さと美しいものをつくる能力が共存していた時代。
美の追求ではなかった古代エジプトの壁画。一見 稚拙な表現にみえるが、生物学者が納得するほど正確な特徴が描かれていて、生息を証明する重要な資料になっている。 古代から絵を描くことは、日常的な伝達手段、記録手段として活用されていた。
紀元前3千~30年 三千年の歴史、古代エジプト。 太陽暦、幾何学。 エジプト絵画のルールは、身分の高い人ほど大きく描く。 小さいのは子供ではなく低い身分や奴隷たち。 奥行き(遠近法)はひたすら重ねて描いて表現する。
遠近法を使わないが奥行を描くときには上下左右にずらして少しずつ重ねて描く。足は左右を描き分けない。土踏まずを描く場合には、両足に描く。
顔は横顔とする、目は正面を向く。 肩、胸、腕は正面を向け胴体と足は横向き。
死後の世界との接点が多く見られる古代エジプト美術。古代エジプト人は、死後の世界に対して独特の関心を持っていた。古代エジプト人ほど「永遠」という言葉を好んだ民族はないといわれる。かれらの死後の世界を描いたのが「死者の書」。のちのユダヤ教、キリスト教の「最後の審判」に影響をあたえた。
『死者の書』
紀元前2千4百年 古代ギリシャ。エジプト文明は地中海を渡り、クレタ島からギリシャ都市国家に影響していった。
ギリシャ人は、絶対的な美の基本を 「熟練した洞察力と直感を用いた美的な成り行き」と定義した。
パルテノン神殿
古代ギリシャでは、アートといった学術的な縛りはなく、教育や学問の目的が共通して人類に心身の動揺を伴うような強い感動emotionを与えることだった。
パルテノン神殿内部(復元)
古代ギリシャの哲学者とは、宗教と科学の狭間にある者で宣教者でもあり科学者でもあった。 また、ギリシャ人は厳格なルールに縛られない自由な人種だった。ルールはあるもののその中にも限りなく自由があり、そんな思考がクリエイターに大きな影響を与える。
古代ギリシャ壺
絶対的な美 古代ギリシャ人は『絶対的な美』について、見るものをどれくらい感動させられるか、という点にあると考えた。その結果、ギリシャの芸術作品は 完璧な美を備えている神々の姿をとった彫刻が多い。
古代ギリシャの哲学者ソクラテスは自分の哲学を著作しなかったのでプラトンが書き残した。ソクラテスは弟子を集めてエロスを追求していた。
ソクラテス
プラトン
ソクラテスの弟子はプラトン、プラトンの弟子はアリストテレス。アリストテレスはアレクサンドロス大王の家庭教師だった。
「顔の表情があまりないギリシャ彫刻」
これは古代ギリシャ人の『人間的感情を公で出すのは野蛮である』の考えに基づくもの。日本でも平安貴族と鎌倉武士それぞれの考えの違いで彫刻の表情が全く違う。どの時代も人の考え、思いを伝えている。
※洞窟壁画、古代エジ プト美術、古代ギリシャ美術といった「古代美術」という区分は、
人類が文字をもつ以前の先史時代から、キリスト教美術が誕生する頃までを指す。
キリスト教美術のはじまり
アートの暗黒時代【中世時代(東ローマ帝国)】
海賊や山賊がのさばるなど無法地帯となっていた中世時代(東ローマ帝国)の世を宗教の規律(神の教え)で統制した。
アウグストゥス帝
『トラヤヌス記念碑』114年頃
「全ての道はローマに通じる」
偉大なりしローマは、華美な装飾を排し、実用本位の都市デザインで世界征服を目指した。”美術”よりは”様式”の革新。
『古代ローマ遺跡』
古代ローマ人の最大の業績『土木・建築 = 道路・水道・公衆浴場』
『コロッセウム』
※ローマ帝国の時代、80年のティトウス帝の時に完成した円形闘技場。
『コロッセウム内部』
ヨーロッパ 中世 ロマネスク、ゴシック、ビザンチン
『随臣を従えたユスティニアヌス帝』 547年頃
ラヴェンナのサン=ヴィターレ聖堂のモザイク画
『キリストと皇帝コンスタンティノス9世・ゾエ夫妻』
言葉の理解や文字が読めない者たちが多く識字率が低かった時代に広く布教していくためにアート(絵=視覚情報)を利用した。
『受胎告知』1200年頃
時代によってアートの目的とモチベーションは違うところにある
原始人たちは、住いの壁に生きていくためのサバイバル生活を描いた。
古代ギリシャは“感動(エロス)、中世は感情(宗教)、ルネサンスは人間(現実)を表現した。バロックは権力、ロマン主義では革命。そして、印象派から個人的なタイムラインを描き出した。
中世(キリスト教美術)時代は、感情(愛情、罪、罰、苦悩など)を表現している。だから中世時代の絵画は重たい。
昔の作品は、古典って言われるけど、その当時は最先端の技術で制作されてた。
教会は、建築技術、ステンドグラス、フレスコ技法など その時代の最新技術を使い、庶民たちを空間的に圧倒し、神の存在を信じさせた。
今でいうアミューズメントパークや先端技術を使った魅惑のイベント空間である。
『アヤ・ソフィア(内部)』
宗教のためだけに利用された美の暗黒時代。教会堂建築は最高の知識・技術・芸術が集約されている。クリエイターたちがストレスを受け入れて、希望を見出した時代。
美の救世主ジョット・ディ・ボンドーネ
『キリストの哀悼』1305年 ジョット・ディ・ボンドーネ
大きな流れに沿いながらも信じる方向性を示していく。ただ反発しても結果は出せない。アートの暗黒時代”ビザンチン”。宗教のために美術が利用された時代から、人間本来の姿に関心を向けていった”ルネサンス”に繋げた画家ジョット・ディ・ボンドーネの功績は大きい。
『エジプトへの逃避』1315年-1320年 ジョット・ディ・ボンドーネ
描いた絵が大理石に代わるフレスコ画
石灰と川砂を混ぜたモルタルが乾く前に描くので表面ににじみ出た石灰が被膜となり大理石化するので色が退色しにくくフレッシュ。 だから、語源はイタリア語の "fresco" (新しい、新鮮な)という意味。
『システィーナ礼拝堂』 バチカン
どの色が使われているかで西洋絵画の読み解きができる
西洋の宗教絵画の色彩ルール
赤=慈愛・殉教・権力
黄=異端者・邪悪さ
白=純潔・無垢
黒=禁欲・死
緑=希望・恋
青=誠実さ・悲しみ
多色、縞=社会の規範を乱す者
宗教絵画
西洋絵画のルール
羊=純真・神への犠牲 鳩=清純さや犠牲の象徴・平和や愛を表わす
牛=生け贄・人類の犠牲となったイエスを象徴する
白鳥=音楽や愛を象徴
ユリ=聖母マリアの純潔を象徴する花
バラ=愛と美、聖母マリアの純潔の象徴
ブドウ=イエスの生命の象徴、血を表す
サクランボ=イエスの受難と聖餐(キリスト教の儀式:最後の晩餐など)を象徴
ドラゴン=災いをもたらす邪悪な存在。異教徒
兎=多産と色欲。聖母マリアの足元に描かれる時は色欲が純潔に打ち負かされることを示す。
『うさぎの聖母』1530年頃 ティツィアーノ
『宗教画』
14〜16世紀 ルネサンス期
ダ・ビンチ、ミケランジェロ、ラファエロ。油絵具の誕生。活版印刷術、羅針盤、火薬の三大発明。コロンブス、マゼラン。
ルネサンス3巨匠
社交的で社交界の花のラファエロは、宮廷、財閥らパトロンに引っぱりだこのナイスガイ。ミケランジェロはこもりがちな性格で一途に仕事をするタイプ。 ダ・ヴィンチはパトロンからの仕事も中途半端で完成させず、二人とは正反対。
西洋美術は、地中海を”ゆりかご”に育った
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