レオナルド・ダ・ヴィンチ手稿より
視覚情報を処理するときに
脳の25%、神経経路の65%以上が使用され
これは他のどの感覚よりも使用率が高い。
絵を観るだけで脳が活性化され五感が磨かれる。
絵を鑑賞(読み解く)することは、 観察力・思考力・伝達力を磨く。
『牛乳を注ぐ女』1658年 ヨハネス・フェルメール
具象画家は、一枚の絵を仕上げていく間に何度も対象物を観察し、観点を確かめながら描いている。観察された情報だけではなく、様々な状況や記憶との葛藤が具象画に直接、表現されていく。
時間の経過や作家の心情、視線の動きが、刻印されるといってもよい。
『ラス・メニーナス+女官たち』+1656年+ディエゴ・ベラスケス
写真は、一瞬の作業の詰み重ねである。幾つかの視線の総合的な情報によって描かれる具象絵画に比べて、写真撮影は一つの視線の動きで、すべての判断を瞬間的に行っていく作業(転写)である。絵画には、「画家の解釈」が具現化される。
『記憶の記録 数分間 イタリア カンポ広場』 文田聖二
人間が物を視て判断する時の眼球運動は、観たいところに止まる固視状態と、次の箇所に移動する速い跳躍状態を繰り返し行う。勿論、視覚機能だけではなく大脳のメカニズムも関係している事はいうまでもない。
このような人間の持つ身体機能からみてみると、カメラの構造は、眼球に近いが、写し出される写真は、人間の記憶とは程遠い。人は視覚神経から脳を刺激し、それを含む幾つかの情報を身体機能で感知する。それらを総合的に判断し記録し引き出す人間の記憶システムは、写真やビデオ映像よりも、原始的な技能である、絵筆で描かれた絵画的伝達システムに近い。
『記憶と記録・日記68』 文田聖二
他に「視野」の問題もある。その特殊な首の構造によって、極端に狭い視野を拡げてい るフクロウ、後方にのびた自分の胴体の影の範囲以外は見える馬の視野。私たち人間の視野は、耳側におよび、やや下方に拡がった変形した楕円形をしている(平面上ではない)。
このような人間の持つ機能を一つ一つ探究し認識した表現が、人間にとってリアルなメディアとして伝承されていくと考えている。
『天地悠遠』 2005年 文田聖二
マルチ人間だったレオナルド・ダ・ヴィンチ(芸術家、技術家、科学者)は、自然界の構造から発見した力学のシステムを、多岐にわたる分野の動力や道具の発明を推進するために応用していった。
『ウィトルウィウス的人体図』 1485年頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ
『子宮内の胎児が描かれた手稿』 1510年頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ
人体解剖をはじめたダ・ヴィンチの真意はわからないが、その原点が自然にあると確信していたのだろう。
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