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イリュージョンをみせる技 : 絵画技法
更新日:2022年4月7日
古代壁画や絵巻物に学ぶ平面的な絵の技法
古代から絵を描くことは日常的に行われていました。たとえば紀元前に3000年も
続いた古代エジプト文明では、伝達手段・記録手段として絵が利用されていました。
そこに描かれた植物などは現代の学者が見ても納得するほどの正確さで、資料的な観
点からも非常に価値のあるものです。
そんな古代エジプトの壁画は、平面的な絵にもかかわらず、不思議な迫力あります。ここではその表現技法に注目してみましょう。たとえば古代エジプト絵画では身分の高い人ほど大きく描かれています。そのため、透視図法で手前になるほど大きく、奥に行くほど小さく描く西洋絵画とは異なり、奥側であっても身分が高ければ、手前の人よりも大きく描かれているのです。それでもひたすら重ねて描かれているので奥行きが感じられるのです。
平面的だけど奥行きが感じられる絵としては、日本の絵巻物も挙げられます。日本
の絵巻物は、西洋絵画とは違う遠近法である「吹抜け屋台」(斜上の空に視点を置き、屋根と天井を無視して屋内を描いたもの)や「空気遠近法」(水墨画にみられる濃淡で奥行きを見せる表現)などの平面的な絵の技法を発展させてきました。

古代エジプト壁画の遠近法は、ひたすら重ねて奥行きをみせる。

日本の絵巻物のように空から俯瞰して、雲の重なりの間から屋根の無い家屋の様子などを見るような“吹抜け屋台”

水墨画のように濃淡で奥行きをみせる“空気遠近法”

『松林図屏風』長谷川等伯 安土桃山時代 16世紀
パースペクティブ = 遠近法

パースペクティブとはざっくりと言うと平面上で奥行きやスペースを感じさせる、あるいはイリュージョンをみせる技法です。




アニメの世界でも空を飛び回るドラゴンボールのような世界は3点透視図法が使われ、

アニメの「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」の部屋の中などは斜投影法といった遠近法が使われています。

西洋のルネサンス以降に完成された“透視図法“など様々な遠近法があります。

『ヴィーナスの誕生』1485年頃 ボッティチェルリ

『モナ・リザ』1503年 - 1505 1507年

ボッティチェルリの“ビーナス誕生”とダ・ヴィンチの“最後の晩餐“”モナ・リザ“、これらを比べるとダ・ヴィンチが如何に遠近法の研究をしていたかが分かります。 情報が複合的に重なってくることで信憑性が増すように名画“モナ・リザ”は、様々な遠近法(空気遠近法、透視図法、重ね(吹抜け屋台と同じ技法)が複合的に使われています。そこらヘンが同時代の名画の中でも目立ってしまうリアルさがあります。さらに薄いベールを頭にまとうことで輪郭線をソフトにし、対照的に手の輪郭をハッキリとみせることで手前にあるインパクトを出すことも遠近法の技術と言えます。
消失点の発見

アンブロージョロレンツェッティ『善政の効果1336年』

アンブロージョロレンツェッティ 善政の効果 ライン入り

フラ アンジェリコ作 聖ニコラウスの生涯1437年制作

フラ アンジェリコ作 聖ニコラウスの生涯1437年制作 ライン入り

『最後の晩餐』1495年 - 1498年 レオナルド・ダ・ヴィンチ
一点透視図法を実証(消失点の発見)した絵


誰もが得られる喜び
皆と同じものを日常で見て、同じような環境の中で、 他の人が気づかなかったことが気になり、 気になってしょうがなくなり探求が始まる、それが発見。
『最も高貴な喜びとは、理解する喜びである』 -レオナルド・ダ・ビンチ-
見上げさせるための彫刻ダヴィデ像
見上げる位置にセッティングすることを考え、胴体に対して顔を大きく首を長く制作し下から見た時にプロポーションが自然にみえるように造られています。遠近法は絵画だけの技法ではないのです。


『ダヴィデ像』1501–1504年 ミケランジェロ・ブオナローティ
遠近法的思考 目の前のものが目立って大きな問題としてみえてしまうが、視点を変えると違うものが大きくみえてくるといったことを哲学者のニーチェは“遠近法的思考”と呼んでいます。 遠近法は、絵画の世界だけでなく人生にも役立つのです。
