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  • 執筆者の写真sfumita7

絵師の遺伝子

更新日:7月7日



画家と絵師


 西洋は「絵で埋める」 細部まで描きこまれていたり、肖像画であっても背景が描かれたりしている。



『オフィーリア』 1851-52年 ジョン・エヴァレット・ミレー


※背景に描写される草花には象徴的な意味が込められている。 ヤナギは見捨てられた愛、

 イラクサは苦悩、ヒナギクは無垢、パンジーは愛の虚しさ、首飾りのスミレは誠実・純

 潔・夭折(ようせつ:若死に)、ケシの花は死を意味している。



 西洋人は「余白があることを恐れる」が、日本は描くべきものだけを描きあとは余白にする。「日本人は満たされていることに恐れを抱く」。


『氷図屏風』 江戸時代 円山応挙



 日本のいさぎよい絵は、漫画・日本アニメのルーツ。 シンプルなイラストは明快で分かりやすいが、簡単に描くということではなく無駄な線を省いているのだ。

 的確に情報を伝えられる線をみつけ最小限の必要な線だけで 印象や特徴を明快に描いている。




『鳥獣戯画絵巻』


※平安時代後期から鎌倉時代までの80年間をかけて、無名の僧侶たちによって庶民の日

 常生活が、擬人化された動物キャラクターで描かれた。



 西洋画家は、脳を刺激し成長させていく論理思考文化を追及しました。ルネサンス以降は特に写実が栄え、視覚をいかにして正確に描写するかを追求した絵画です。


『野うさぎ』 1502年 アルブレヒト・デューラー



 日本では、情緒に感動して癒され、心で理解する情緒思考文化が栄えました。江戸期に見られるような浮世絵、つまり視覚情報を簡略化した記号としての絵画です。


『富嶽三十六景-神奈川沖浪』 葛飾北斎




日本の線描


   線で描いた絵は、視覚情報の入り口(特に物体の境界となる線の位置、傾き、太さ、動き、奥行きなどのさまざまな要素を分析)に強く訴えかけ、面で描いた絵は、最終ステージ(特に質感のある面の組み合わせで作られる形など、統合された物体の情報を処理)に強く訴えかけます。





 東洋においては、自然と自己の境界はあいまいなので、人間だけではなく、山や海、空や雲、あるいは名もなき雑草、雑木、めだかやトンボでも、本気で向き合い描いています。

つまり、自己は自然を感知しているか否か、自然も自己を感知しているか否かさだかではないと感じる故、主観と客観が一円相になることを理想とし、それを象徴的に表現することを望んできたように思われます。


 東洋画は、表現主義:自然を見て感じている、自己の精神を写すことがはじまりであり、完成とする。西洋画は、自然主義:自然を忠実に写すことがはじまりです。


『北斎漫画』


『百人一首 乳母が絵解』 葛飾北斎



 「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)」、 この仏教思想が日本のロボットや漫画のキャラクターたちに命を吹き込んでいます。 

 草も木も土や風に至るまで地球上のありとあらゆるものに仏が宿るといった人間と同じように魂を持つという考えです。




オノマトペからの質感表現


 オノマトペは、感触を表したもの以外にも、音や声などをまねた擬音語(ざーざー、ワンワンなど)や、状態や感情などを表現した擬態語 (だらだら、つるつるなど)があります。






『猫』 藤田嗣治




 日本語はオノマトペの語彙が豊富だといわれています。たとえば「笑い」という言葉を1つとっても、「にこにこ笑う」「クスクス笑う」「ニヤニヤ笑う」「ニタニタ笑う」など数えきれないほどの表現があります。

 ふだん私たちは、話し言葉や書き言葉の中でオノマトペを用いて、微妙なニュアンスの違いを伝えているのです。


 とくにマンガでは多様なオノマトペが使われており、その表現方法にも特徴があります。たとえば「ふわふわ」と「キラキラ」は、それぞれ雲と金属のような質感の違ちがいを組み合わせることで、オノマトペそのもののイメージを視覚的に伝えられます。


 他にも効果音では、文字に石の材質を描いて「ゴンッ」というオノマトペに重さや硬かたさの質感を加えています。


『ドラゴンボール』



   ふだん何気なく使っているオノマトペの文字にも絵の質感表現を加えることで、より的確に雰囲気や様子、状態を表現できるのです。




日本が伝える文化


 平安時代の絵巻物や江戸期に見られるような日常の風情に感動して癒される浮世絵は、脳を休める情緒思考文化である。

 日本人は、不快を快に転じることのできる文化を持っている。 西洋の画家たちを驚かせた浮世絵師 広重の雨の表現。 当時、線で雨を視覚化する発想はなかった。今、当たり前のものとしてみている、感じていることは先人が気づかせてくれた。


『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』 1857年 歌川広重

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