top of page

なぜ「創造性」を求められるのか

  • 執筆者の写真: sfumita7
    sfumita7
  • 7 日前
  • 読了時間: 4分

更新日:6 日前




「創造性」という言葉を聞くと、才能のある人や天才的な芸術家を思い浮かべるかもしれません。でも実は、創造性は特別な人だけが持つ力ではありません。人が「考える」「感じる」「つくり出す」ことの根っこにある、誰もが生まれながらに持つ力なのです。


19世紀ヨーロッパの画家ドラクロワは、その力を絵筆で表そうとした一人でした。彼の代表作「民衆を導く自由の女神」は、ただの戦いの場面ではなく、人々の「自由になりたい」という意志そのものを描いた作品として知られています。派手な色使いや大胆な構図の中に、社会の叫びを表現したのです。当時の人々はその絵に、自分たちの希望を見たのです。


『民衆を導く自由の女神』 1830年 ウジェーヌ・ドラクロワ
『民衆を導く自由の女神』 1830年 ウジェーヌ・ドラクロワ

このようにアートは、単なる「感性の表現」ではありません。その背後には、時代の流れ、社会の考え方、人々の生きる姿勢が強く影響しています。


例えばドラクロワの時代、ヨーロッパは産業革命によって大きく変わりつつありました。機械が人の仕事を奪い、工場では同じ作業を繰り返す労働者が増えていきました。時間は管理され、規律が重視され、やがて「個性よりも効率」を求める社会が広がっていったのです。


この変化の中で生まれたのが「近代教育」という仕組みでした。子どもたちは一斉に教室に並び、同じ内容を覚え、同じ答えを出す力を鍛えられました。社会の歯車として生きるためには、それが必要だったからです。しかし、そこには大切なものが置き去りにされていきました。それが「創造性」です。


やがて、工場で働く人々や都市で暮らす庶民の心には、次第に疲れや不安が広がりました。「もっと自分らしく生きたい」「自由に感じ、考えたい」という思いが芽生え、芸術に共感の場を見いだしたのです。

古代を理想とした新古典主義の厳格な絵画に代わり、ロマン主義という新しい芸術の波が広がりました。ロマン主義は、「理性より感情」「秩序より自由」を重んじ、人間らしい生き方を信じた運動でした。ドラクロワはまさにその中心にいたのです。


ウジェーヌ・ドラクロワ
ウジェーヌ・ドラクロワ

彼の作品が庶民に愛されたのは、色づかいや構図の美しさだけでなく、「人が心で感じ、行動することの大切さ」を代弁していたからでした。アートは社会を映す鏡であり、そこに映るのは人間の願いや苦しみ、希望なのです。


この「自由に感じ、考え、つくる力」こそが、現代でも求められる創造性の源です。科学の世界でも同じことが言えます。

たとえば発明家エジソンは失敗を繰り返しながら電球を完成させました。彼の創造性は「アイデア」だけでなく、「失敗しても諦めずに工夫を続ける力」にありました。

理論物理学者のアルベルト・アインシュタインもまた、「想像力は知識よりも重要だ」と語っています。理論物理学の礎となる相対性理論も、「もし光の上に乗って移動できたら?」という子どものような空想から生まれたものでした。


理論物理学者 アルベルト・アインシュタイン
理論物理学者 アルベルト・アインシュタイン

アインシュタインは後年こうも言いました。「直観は聖なる授かりものであり、理性は誠実なる従者である。私たちは従者を敬い、授かりものを忘れてしまった。」つまり、人間社会は理屈やルールを重んじるあまり、本来の創造的な感性やひらめきを軽んじてしまった、という警鐘です。

アートもサイエンスも、突き詰めれば「新しい見方を見つけること」、つまり創造の営みなのです。絵画の表現も、科学の発見も、共通しているのは「なぜ?」「どうして?」と問いを立て、自分の頭で考えることから始まる点です。


現代社会ではAI(人工知能)が多くの情報を処理してくれますが、「新しい価値」を生み出すことはまだ人間にしかできません。だからこそ今、「創造性」がいっそう重要になっているのです。



0 ⇒ 10】


①0を1にする = 無いものを創造する

②1から9にする = 既存のものを統計的に判断し効率よく作業する

③9を10に引き上げる = 成長の限界にきたときに新しい価値観を創造する


②は、AIが進歩していく能力

①と③は、人にしかできないこと、それがアート(創造性)



アート思考とは】


A点からB点まで、できるだけ効率的な手段でたどり着く方法ではなく、

B点を発明するプロセスである。



絵筆を握ることも、音楽を作ることも、あるいは新しい考え方を発想することも、すべては「自分の感じた世界を、自分の言葉で表現する試み」です。

創造性とは、決して遠い才能ではなく、「感じて考える心」の延長線上にある力。時代が変わっても、私たちが成長し生きていくうえで、何よりも大切な「人間らしさ」そのものなのです。

 
 
 

コメント


©2023 by 文田聖二 SEIJI FUMITA。Wix.com で作成されました。

bottom of page